今日は東の果て、ラオスとの国境に向かう日です。朝8時にトンとホテルで落ち合い、片道2車線の非常にコンディションのよい道をひた走ります。9時20分に着いたのが、キノコ状の奇岩(Mashroom Shaped Rock Piller)、サオ・チャリアン。ジュラ紀の軟らかい砂岩の上に白亜紀の堅い砂岩が乗ってこのような形になったのだと英語の説明書きがありますが、見れば見るほど不思議です。

ここから少し進んだところで、絶壁の上からメコン川越しにラオスの土地が望まれるパー・テムに到着。上から見るメコン川は意外に流れが早く、茶色の川面にところどころ黒っぽい水が分離しているのはムーン川の合流点が上流の遠くないところにあるからです。右手の下流の方は、広々とした大地が広がっています。ここからはもちろん見えませんが、メコン川はやがてカンボジアを経て、ベトナムへと続いているのです。島国である日本の川とは決定的に異なる、大陸の川の国際性を実感しました。

さて、岩の大地から右手に下へ続く歩道の入口があります。ここを下ると、本当に綺麗な砂岩の崖下に出ます。思わずみとれるほど見事に磨かれた岩の壁と岩の屋根(オーバーハング)の下に道が続いており、しばらく進むと壁面に先史時代の壁画が現れました。2000〜3000年前に描かれた絵と言われていますが、象・なまず・亀・手のひら・たくさんの壺が鮮やかな赤色で描かれていて、見飽きることがありません。これらの絵は崖の中程の比較的高い位置に描かれていますが、その当時は川岸も今より高い位置にあったということなのでしょうか。

さらに進んで崖が低くなったところから上に登り、ぐるりとまわって元の場所へ戻ります。既にお昼の時間で、昼食は車でしばらく走ったところにあるメコン川に浮かぶ船上のレストランでとりました。ここには各国の有名人も来ていると見えて、船尾の壁にはいろいろな人の写真がべたべた貼ってあります。トンが指差したところには、タイクーをひと呑みにしそうなほどの大ナマズを前にして、なんと我らが秋篠宮のお姿が……。
公式に開かれているタイとラオスの国境は5ケ所、そのうち陸路(川を越えない)でラオスに入国できるのがチョーン・メックです。賑やかな市場が立っているところに車を停めて、目の前の鉄門の横を抜けたところでトンが「さあ、もうここはラオです」と言ったときは驚きました。ビザはおろか、パスポートの確認もなく、自由な往来が実現している「国境」です。

車道を少し進むと、左下にラオス側の市場……といっても土産物屋の大きくしたものが軒を連ねているようなものでずいぶん静かです。置かれているものを見るとベトナム製の物産が多い様子。子猫がのんきに昼寝している路地を抜けて元の道に戻り、ゲート近くの免税店に入ったところ、元フランス統治下にあっただけあってワインが充実しています。しかしもっとエキゾチックな土産を買いたいと思って物色し、40バーツ(=120円)でラオス製のウイスキーを買いました(このウイスキーはあとでF女史と一緒に味見をしましたが、少々変わった匂いがするものの、けっこうおいしく飲めるものでした)。ゲートを通れば元来たタイ側の市場。こちらの喧噪はたいしたもので、特に山盛りのランブータン、ラムヤイ、マンゴスチンなどの果物類が充実しています。
これでだいたい予定された日程は終わりですが、まだ時間に余裕があるので、トンはシリンドーン・ダムに案内してくれました。1971年に完成し、第二王女シリンドーンの名を冠したこのダムが作る、透明度の高い水をたたえたダム湖のほとりには、王妃のレストハウスやきれいに整備された公園があり、静かなひとときを過ごすのにはうってつけです。ただし、お化けのように大きく育ったスパティフィラムやポトスは、さすが熱帯。さらに、ウボンに戻る道の途中にあるワット・プーカオ・ケーオに立ち寄りました。きれいな茶色のセラミックにクメール式の彫刻が施されたお堂の内側、天井近くの壁面にはタイ各地の著名なパゴダが浮き彫りにされています。

最後はワット・ノーン・パープーン(と聞こえた)。広大な森の中にある近代的な寺院で、博物館やらお坊様のパゴダやらが大きいのですが、歴史がある寺というわけではないので、自分としては今いち興味が喚起されませんでした。
ウボン市内に戻り、F女史から指令を受けていた彫刻入りのキャンドルを買ってから、ホテルのレストランでビュッフェスタイルの中華料理。バンコクに戻る飛行機の便が少ないため、時間をつぶす必要性があるのでしょう。腹一杯に食べて、ようやく空港へ向かいました。トンは手もちの見どころを総動員してガイドしてくれましたが、後から思えば、自分でもう少し事前によく調べて「ここへ行きたい」と希望をはっきり伝えるべきでした。ちょっと反省しながら、トンと別れの握手を交わして飛行機に乗り込みました。