成田空港を飛び立ったNH915便は、意外なほどに空いていました。窓際3列は一人で占領できたし、周りを見回しても6割くらいの埋まり具合ではないでしょうか。搭乗前に空港の売店で買った『チーズはどこへ消えた?』(スペンサー・ジョンソン著)を1時間あまりで読み終えて、機内誌『翼の王国』を手にとると、最近話題のエコノミークラス症候群に対する注意として「飛行中は適度な水分をとること」「足の運動をすること」を勧めています。しかし機内で足をばたばたさせるのもはばかられたので、かわりにゴルフ映画『The Legend of Bagger Vance』(『バガー・ヴァンスの伝説』)を見ることにしました。ロバート・レッドフォード監督、ウィル・スミス&マット・デイモン主演ということで期待してみましたが、何となく独特のムードがあるものの、いかにもテンポの悪い映画でした。しばらくすると眼下にベトナムの海岸線。やがて雨のバンコク、ドン・ムアン空港に到着しました。
入国審査官のゆっくりゆっくりした仕事ぶりにいらいらしながら手続をすませ、外に出たのは到着から1時間後。ところが、そこに待っているはずのF女史は姿が見当たりません。おっかしいなぁとは思いましたが、どうせヤンゴンまで同じ飛行機に乗ることになっているのだからとあまり気にせず、タイ航空のカウンターに行ってチェックインしました。念のためしばらく予定の位置で待ってから、今度はタイからミャンマーへの出国手続をすませてゲートへ行ってみると、案の定ベンチに座って本を読みふけるF女史の姿が……。

TG305便の、テリーヌの乗ったオープンサンドとパクチーを散らしたシーフードサラダの機内食はとてもおいしかったのですが、F女史はパクチーが苦手なので、F女史の分のシーフードサラダも食べてしまいました。雲の下に降りると眼下には大きな川、そして濡れた茶色の平原が広がっています。初めて見るミャンマーの国土です。着陸後、空港の窓口に行って入国手続。ここで外国人は200USドル相当を外貨兌換券(Foreign Exchange Certificates=FEC)に強制的に交換させられることになっているのですが、私が男女二人の係官が並んだ両替窓口に行ってみると、先に入国審査を済ませて両替窓口に並んでいたF女史と係官との間でどうも話が通じていません。しばらくやりとりがあってわかったのは、「本来は一人200USドルずつ両替が必要なのですが、ここで5USドルずつ我々(係官二人のこと)にプレゼントしてくれれば、両替は二人(私とF女史)で合わせて200USドルでいい」と言っているのでした。FECは確かにUSドルと等価で使えるものではありますが、ミャンマー国内でしか使えないので、できることなら両替は最小限にとどめたいところです。ここは迷わず係官の好意(?)に甘えることにしました。
税関を抜けて待合室に出たところで、今回の旅のガイドを務めてくれるチョチョルィンさんと合流しました。実はF女史は去年の2月にもミャンマーを旅行しており、そのときガイドしてくれたのがチョチョルィンさんでした。そのときのガイドぶりにいたく感激したF女史は、今回の旅でもチョチョルィンさんを指名したというわけです。ちょっと低いハスキーな声と悪戯っぽい目が魅力的なチョチョルィンさんは、なかなか流暢な日本語をしゃべる31歳の女性です。F女史とひとしきり再会を喜びあってから、タクシーで今宵の宿であるSedona Hotelへ案内してくれました。そこのロビーで今回の旅行の手配をしてくれているImperial Amazing Green Travel & Toursのサイ社長のお姉さんにツアー代金540USドル/人を支払い、ホテルからのプレゼントであるシャンバッグ(シャン族が使う編んだ肩掛けバッグ)をもらってから部屋に落ち着きました。

時計を2時間半戻して、さぁ、明日からが本格的な旅の始まりです。