マラング・ゲート - マンダラ・ハット

今日はゆっくり10時出発の予定。しかし昨夜ぐっすり眠って早く目が覚めたので、7時には朝食前の散歩に出ました。すると同じツアー参加者のH氏とB氏が外から戻ってくるところに行き会い、ホテルから道を数分下ったところに格好のビューポイントがあってキリマンジャロがよく見えるとの話を聞きました。このホテルに出入りしているトーマスという青年が案内してくれるようです。さっそく教えてもらったトーマスに声を掛けて、ホテルのゲートを外に出ました。トーマスは非常に若く見えるのですが、話を聞いてみると既に二人の子持ち。タンザニアの学校事情を聞いたり簡単なスワヒリ語を教わったりしながら5分程歩いて振り向くと、上の方に真っ青な空をバックにキボ峰とマウェンジ峰が大きく並んでいるのが見えます。その間の緩やかな鞍部が明後日越えるサドルに違いありません。「うーん、すばらしい」と唸ったまま立ち尽くしました。

キボ峰とマウェンジ峰の遠景

ホテルに戻ってトーマスにチップの1ドルを払いました。朝の光の中であらためてこのカプリコーン・ホテルのたたずまいを見回してみると、豊かな緑の中の情緒豊かな建物でなかなかのムード。キリマンジャロ登山を目的とせず、このホテルでゆったり過ごすことだけを目的にここに来ても楽しいかも知れないな、などと思いながらぶらぶらと部屋に戻りました。同室のA氏も既に起床していたので今しがたの顛末を説明すると、A氏も山の姿見たさにいそいそと部屋を出ていきました。「案内を頼まなくても大丈夫ですよ」と声を掛けたのですが、後から聞くと結局A氏もトーマスにつかまったようです。トーマスは、結局この朝同じツアーの客を同じ場所へ3回案内して3ドル稼いだことになります。しかし、後で一同のところに枝につかまった大きなカメレオンを持ってきたりしてフォローに努めていたあたりは、日本人の弱味を十分に心得ていました。

カメレオン

この日、我々は荷物を3つに分けています。ひとつは自分が背負う必要最小限のザックで、行動中の水や貴重品、雨具などを入れるもの。次にポーターに持ってもらう大型の荷で、この中にシュラフや着替え、アタック時の防寒具などを入れてあります。最後にこのホテルにデポするスーツケースなどで、都市間の移動時に使う衣類など登山中は不要のものは全部ここに置いていきます。私の場合は、自分の身につけるのはデイパック(上衣、雨具、水筒、テルモス)と少し容量の大きなウエストポーチ(財布、パスポート、手帳、ティッシュ、薬、カメラなど)。ポーターに持ってもらうものは使い古した50リットルのザックにしてあります。しかし、こうして万全の体勢で出発に備えたのですが、朝食後に早川TLから、ゲートが混んでいるので出発は11時にするとのアナウンスがありました。今日入山する登山者はずいぶん多いようです。手持ち無沙汰でしばらく待っていたところ、どうやらゲートが空いてきたとの連絡が入り、10時15分に車に乗ってホテルを後にしました。といっても坂道をほんの少し登ったところにゲートがあり、たくさんの現地の人々(雇われるのを待っているポーター達)の間を抜けて駐車場に停まると、すぐにミネラルウォーターとビニール袋に入ったランチの配給を受けました。

マラング・ゲートの受付

三角屋根の受付で早川TLが手続を済ませている間、我々はいざ出陣といった面持ちで思い思いに記念撮影。しばらくして手続も終わり、今回の山旅の現地ガイド二人との顔合わせが行われました。メインガイドが、実に知性的な顔だちで人に命令することに慣れた厳しさと柔らかい笑顔とをあわせもったブライソン。サブガイドが長身で精悍な顔つきのジョワキム。ここからジョワキムを先頭に、早川TLとブライソンをしんがりに隊列を組んで、10時45分いよいよ登山開始!緩やかな坂道を歩き出しました。

登山開始

今日の行程は概ね樹林帯の中であり、気温も高いのでTシャツ1枚で歩きます。歩調は概ねゆっくりですが、まだ高山病を心配する高度ではないので、ふつうのハイキングのペースより少し遅いくらいの感じです。道はよく整備されていて、両脇に側溝が掘られており、乾期ということもあってぬかるんだところはまったくありません。空気も乾いているし、傾斜も緩やかで実に歩きやすい快適な道です。下山してくる登山者ともしょっちゅう行き交いますが、我々のような大部隊は少なく、単独か少人数でガイドを一人連れただけの日本人もけっこういます。後で聞いたところでは、こちらに駐在しているJICAの職員の方などがオフをとって登りに来ることもあるようです。我々は1時間歩いたところで小休止をとり、次の1時間を歩いたところで昼食休憩となりました。入り口で配られたビニール袋の中には、サンドイッチ、チキン、ゆで卵、とても皮が固い柑橘類、小さいバナナ、それにピーナッツなどの行動食が詰め込まれていました。

樹林帯の終わり

道はさらに続きます。昼食をとったところから1時間も歩いたあたりから植生がはっきりと変わってきて、熱帯風の樹林帯を抜けて葉の細い樹木が多くなり、サルオガセが増えてきます。下生えにはシダが目立つようになってきました。その植生がいったん熱帯風に戻ったな、と思ったらひょいと開けたところに飛び出しました。そこが今宵の宿、緑の三角屋根のコテージが建ち並ぶマンダラ・ハットでした。

マンダラ・ハット

ひときわ大きな三角屋根が食堂になっており、その周囲に受付や宿泊棟の小振りの三角屋根がたくさん並んでいます。宿泊棟の構造は、三角柱を横倒しにして真ん中に仕切壁を設け、その両側の空間にそれぞれ下段3つ、上段1つのベッドがしつらえられています。つまり、ひと部屋が4人部屋で、それがふた部屋で一つの建物を構成しているわけです。今日はA氏、K氏、M氏との相部屋となり、この中で一番若い(!)私が上段のベッドを使うことにしました(この後下山するまでずっと、私は上段のベッドを使う巡り合わせになりました)。

ハットの構造

ポーターが運んでくれた荷物を受け取ってベッドにシュラフを広げ終えると、食堂に集まってまずはティータイム。ポットにたっぷりのお湯に、チャイのティーバッグやミロ、飲むチョコレート、粉ミルク、砂糖などがテーブル上に並べられ、いくらでも飲むことができます。また、大皿にビスケットやポップコーンが盛られ、実に豊かなティータイムです。

ゆっくり休んでから、16時30分から高度順化のために近くのマウェンジ・クレーターへ出向きます。ハットを出て樹林の中を進むと、木の梢に全身が黒くて顔が白いサルを何匹も見かけました。道はやがて草原状に開けたところに出て、やがて緩やかに登りにかかるとわずかでクレーターの縁に出ました。ここは底まで草に覆われていますが、顕著な火口跡です。時計と反対回りにお鉢巡りをすると、ケニア方面の雄大な大地の広がりも見えてきました。また、大きな白っぽい花プロテアや樹木に咲く黄色い花エリカなどもあって楽しい道です。ゆっくり歩いて20分程でお鉢巡りは終わり、17時40分にハットに帰り着きました。

マウェンジ・クレーター 夕食

夕食は18時から。最初にとろみのあるスープが出てきて、そのあとトースト(マーガリンやピーナツ・バター等とともに)、ミートソースたっぷりのスパゲティ、茹でたポテトと炒めたタマネギ、バナナ、そしてティータイム同様好きなだけの飲み物。食事が終わった後に各自の部屋に戻り、早川TLの往診を待ちます。この日から登頂日まで毎晩、血中酸素濃度と脈拍を計ることになっているのでした。やってきた早川TLが取り出したのは人さし指をかぱっと挟み込むような黒く小さい装置で、上面に二つの数値が赤く表示されるようになっており、どうやら赤外線の働きで(?)必要とされる数値を測定することができる様子。ちょっと緊張しながら測ってもらった結果は、血中酸素濃度が91%、脈拍が94。けっこう脈が上がっているものだなというのが私の第一印象でしたが、現時点では特に問題なしとの御墨付きを得て、安心してシュラフにもぐりこみました。

10:45 マラング・ゲート 1,860m
15:10 マンダラ・ハット 2,700m