今日は、土合橋から白毛門への尾根をはさんで白毛門沢と反対側にあるゼニイレ沢を登ります。「土合山の家」を出て、土合橋の先から蓬峠に向かう新道を湯檜曽川沿いに上流へ進むこと45分、一ノ倉沢にぶつかったところで対岸にガレの堆積が見えます。これが、ゼニイレ沢です。国境稜線の「覗き」から賽銭を投げ入れると一ノ倉沢を転げ落ちて対岸のこの沢に入るというので「銭入れ」沢と名付けられたそうですが、このガレでは銭はすべてせき止められてしまうでしょう。この上にナメが開けているとは、ガイドブックに書かれていなければ信じられません。朝のまだ頭が十分に働かない状態でぼんやりとガレを見上げながら、ここで沢装備を身に着けました。

まずは歩きにくいガレをひたすら登っていきます。今にも崩れそうな土のゴルジュもあったりして、そういうところはできるだけさっさと通過しようとしますが、足場が悪く思うようにスピードが上がりません。それでも、背後に徐々に全貌を見せてくる一ノ倉沢の眺めを慰めとしながら二俣を過ぎるとナメっぽい部分も出るようになってきて、先が楽しみになってきました。

ガレの登りは50分ほどで終わり、100mナメが始まります。どこでも適当に登れそうな気がしますが、水流の左寄り、比較的乾いた部分を岩のシワを拾いながら登ると、いったんコブ斜面のようなボコボコの沢床になって、数メートルの段差から再び大きなナメとなります。このあたりがゼニイレ沢の一押しポイントで、さすがに西ゼンなどに比べれば見劣りはしますが、あの出合のガレからは想像もつかない広闊なナメは一見の価値があります。

このナメも左側の乾いた斜面を登りましたが、案外フットホールドに乏しく真上に追い上げられて、すぐ右手に見えている水流に戻りたくてもなかなか戻れずに少々あせりました。下手にフリクション頼みのトラバースをして滑落したら、自分が一ノ倉沢まで転げ入ってしまうことになるのでしょうか?とはいえ、ガイドブックに「15m逆くの字滝」などとあるのは横から見た限りでは顕著な滝というよりはナメ上の単なる水流の屈曲に過ぎず、要するにナメのどこでも上に抜ければいいのだろうと自分を納得させて直上を続けました。

ナメの最後は数メートルの段差状の滝。ここを左から巻いて越えると沢筋は狭まり、さらにいくつかの滝を越えるうちに徐々に水が涸れてきます。最後は再びガレに戻って、二俣(ガイドブックでは三俣)をいったん左に入ったもののすぐに行き詰まり、少々薮を漕いで右隣の沢筋に入ったところ、そのどんづまりにちょいと立派な岩壁が現れました。この奥壁は手前から左側に踏み跡がついていましたが、反対側の右上するランペが易しそうだったのでそちらから上がり、左にトラバースして申し訳程度に湿った本流に復帰。さらにIII級程度の登りを交えながら適当に登っていくと、もうひとつ岩壁が出てきて、ここは左側に回り込んで一段上がってから、灌木をむんずとつかんで腕力頼みで越えました。そこから右へ、かすかにルンゼ状になっている箇所を登り、あとはひたすら薮を漕ぎます。気持ちとしては右上に登るラインとしましたが、どうやら潔く右トラバースにした方が労力は少なかったようで、それでも10分余りの薮漕ぎで登山道に飛び出しました。



