小田急線の新松田駅前を9時35分に出発するバスに乗ることにしてモリタ氏と待ち合わせましたが、バス停の時刻表を見ると、この時間帯だけ日曜日以外は中川止まりで、出発点となる大滝橋へはそこから30分余分に歩かなければなりません。かといって西丹沢自然教室行きの次発は1時間後。ついてないなと思いながらバスに乗って出発を待っていると、駅から出てきた別のお客が待機中の運転手さんに「このバス、西丹沢へ行きます?」と聞いています。おあいにくさま、このバスは中川行きですよ、と心の中で呟いていると、運転手さんはバスの行先表示を変更して「はい、いま西丹沢行きになりました」。お客がいれば行き先を変更するのか?すごいぞ、富士急湘南バス!そんなわけで無駄に歩くこともなく、新松田駅から約1時間で大滝橋に降り立ちました。

ここから大滝沢沿いに東海自然歩道の一部にもなっている林道〜登山道を25分ほど歩いたところに「マスキ嵐沢」と書かれた比較的新しい標識が立っており、ここで沢装備になります。モリタ氏は自転車用ヘルメットにしっかりしたつくりのスニーカーを持参しており、ハーネスは私のフリー用を貸してあります。入渓点はガレており、これだけ見るとあまり遡行興味が湧きませんが、ものの5分も歩かないうちにゲートのような3m滝が現れて、これを左から簡単に越すととたんにナメっぽい、いい雰囲気に変身します。ところがここで、モリタ氏のスニーカーが存外滑ることが判明。濡れてつるっとした岩ではほとんどフリクションがきかないようです。よって、以後の滝でのライン採りは極力凹凸重視とすることにしました。
顕著な樋状の流れのすぐ上に続く、かわいい釜を持つFナンバーがついてもおかしくない4m小滝をじわじわと越すと、ナメの上に大きな岩が散乱している場所に出ました。どうやらここ1年以内に奥の山肌から崩壊があったらしく、左から落ちる水流を見上げたときに残置ピトンが目に入ってやっとここがF1だと気付いたほど。

このあたりから、滝がどんどん続き始めます。F1の上わずかで、岩壁の真ん中に樋状に水を落とすF2。モリタ氏に「水流の中に足を突っ込めば、足がかりがあるはずだから」とアドバイスして先行してもらうことにしましたが、手前の釜にモリタ氏が踏み込んだとたん、15cmはありそうな魚影が走りました。モリタ氏は登攀そっちのけで手づかみにしようとしましたが、そう簡単にいくわけもなく、しばしの奮闘の後諦めて滝に取り付きました……が、やはりスニーカーのフリクションでは少々苦戦。後から私も同じラインで登りましたが、予想通り水流の下には豊富にホールドがあって、少なくともフェルトソールなら何ら問題なし。その先数分で、行手の斜面に二段の高い滝が出てきました。2段15m、核心のF3です。
F3は、下段はすたすた歩いて登れます。そこに左から枝沢を合わせて、右上の下から3分の1の位置にバンドが走っており、バンドの下はつるんとしたスラブ、バンドの上は水流沿いが手がかりがありそうですが、落ち口の下は立っていそうな感じでホールドの具合も行ってみないとわかりません。ただ、落ち口の右側は易しく登れそうなので、そちらへのエスケープを念頭に置きながら行けるところまで行くことにしました。この日初めてロープを出してモリタ氏とつながり、先行。スラブ左手の細かいホールドをつないでバンドに乗り上がり、バンド上を右手の水線方向へトラバース。水流の右側に手がかり足がかりが豊富にあるので、それに乗って2歩上がってみましたが、そこから先のホールドが手足とも甘い。うーん、せめて残置ピトンでもあればセルフビレイをとって乗り上がるのですが、その先もやはり傾斜が立っているみたいなので、ここは自重して右上に逃げることにしました。落ち口右手は木の根もつかんでぐいぐいと上がり、モリタ氏にはバンドに上がらずに下から右へ回り込んで安全なラインで登るよう指示して、ビレイ態勢に入りました。

F3の落ち口から上流を見ると、もう次の滝が顔を覗かせています。茶色い岩肌の斜滝を一段上がると、壁状の岩に上から右下方向に斜めに水流が落ちていて、これがF4です。ここは水流の左側に豊富なガバホールドがあって、これを追っていけば自然に上に抜けられます。ただし高さはそれなりにあるので、念のため上からロープを垂らしてモリタ氏を確保しました。

続いて3mの緩やかな滝を越すと、落ち口が小ハングとなっているつるっとした5mF5。いかにも滑りそうな見てくれに、右側から小さく巻くように登りました。ここもモリタ氏のスニーカーでは厳しいものがあるため、ロープで確保。この滝を越えたところで、昼食休憩としました。




