4月に入ってめっきり暖かくなってきたので、今年最初の沢登りに行くことにしました。誰かパートナーができればモミソ沢へ行って、懸垂岩での岩トレを組み合わせようかと思っていたのですが、あいにく単独となってしまったので、前々から目星をつけていた春岳沢に行くことにしました。どの記録を読んでも「夏向きの沢」ということになっていますが、なに、この暖かさなら4月でも大丈夫だろうと思いながら、秦野から蓑毛行きのバスに乗りました。
蓑毛からすぐに、金目川沿いの舗装路を緩やかに登ります。民家風の割烹や色とりどりの花が美しいテラスつきの喫茶の前を過ぎ、やがて湧水地の標識を見ながら木橋を渡って、ここから右に切り返すと山道っぽくなります。少しの歩きで髭僧の滝への標識があって、沢沿いに下ると10m程の立派な滝の前に降り立ち、ここでスニーカーから沢靴に履き替えました。考えてみたら、沢靴を履くのは昨年9月のナルミズ沢以来です。

髭僧の滝は豊富な水量で落ちていますが、身繕いしながらちらちらと視線を送るとおおむね手がかり足がかりは読めてきます。ただ、けっこう濡れそうなのと、落ち口の手前2m程が手がかりに乏しそう。今年最初の沢で怪我はしたくないので、ここはおとなしく右の乾いた緩やかなカンテ状を登ることにしました。こちらはなんら問題になるところもなく、最後に小さくトラバースして髭僧の滝の上に出ました。そこで落ち口を上から見下ろしてみると、案の定はっきり使えるホールドに乏しく、左壁に1か所ピトンが打たれていて短いテープスリングが残置されていました。
ここから先はこれといって困難な滝もなく、多少高さのある滝でも左右どちらかに逃げることができてしまいます。しかしそれではわざわざここまで来た甲斐がないので、久しぶりの水や濡れた岩の感触を身体に思い出させるようにわざと難しそうなラインを選んで登っていきます。そのうち、忘れかけていたフェルトのフリクションや、濡れたカチに指をかけての引きつけ、遠いフットホールドに片足で乗り込んで徐々に身体を引き上げる感覚が、だんだん甦ってきました。それにしてもこの沢は明るい、いや明るすぎ。おそらくこれが夏なら両岸から木が覆いかぶさって緑の空気の中を登ることになるのでしょうが、この時期この場所ではまだ木々の葉も芽吹ききっておらず、すっかり開けた渓相が潤いの乏しさを感じさせるほどです。「夏向きの沢」というのは、もしやこのことでもあったのでしょうか。




どんづまりが堰堤になっている場所で左へ方向を変え、そこからわずかの登りで明るく開けた三俣に到着。右上にはこの沢の水源があって、覗き込んでみると豊富な水が滾々と湧き出しているのを見ることができます。たったの1時間で遡行終了では物足りないと思えば、ここから正面の涸沢を詰めてもいいのですが、笹薮漕ぎがうるさいらしいので遡行はここで終了とします。スニーカーに履き替え、お弁当を食べてくつろいでから、右手へ等高線に沿って伸びる道に入りました。この道はよく整備されていてとても歩きやすく、ところどころで山桜が目を楽しませてくれます。20分もしないうちに下社から大山山頂へ続く登山道に出て、ここからはハイカーの皆さんと一緒に大山山頂を目指しました。
