久しぶりの沢登りは、戸川林道から丹沢表尾根の烏尾山へ突き上げる新茅ノ沢。テクニカルな12mの大棚F5が難しく、過去に事故も多発していてガイドブックに「初心者には(直登は)勧められない」との御託宣あり。
「猫の森」の車を新萱橋の先に停め、ウェーディングシューズを履いて入渓すると、両岸が迫っている沢の中は全体に暗くひんやりしています。出だしの3mの滝を何なく越えて次の7mがF1です。50mロープの先頭が黒澤さん、最後尾が私で、その真ん中に去年北岳バットレスで御一緒したM氏がアンザイレンされたかたちで、左のクラックから次々に滝を越えました。以下、7mのF2、4mのF3を登って5mのF4は左から軽く巻くと、前方にいよいよF5が立ちはだかりました。ここまで20分。
しかし、F5の下には5-6名のパーティーが待機しており、一人ずつ上から確保されながら登っていましたが、サブリーダーらしき最後の一人を除いてほぼ例外なくランニングのクイックドローを掴みA0にしてしまっていました。ただぼけっと待っているのも芸がないので、急遽黒澤さんによる「ツェルトの張り方講座」。立ち木へのロープの縛り方、ツェルトのぶら下げ方など一通りの講議をしてもらいました。

50分程待ってようやく先行パーティーが上に抜けたので、いよいよ我々の番です。まず黒澤さんがお手本を示しながらリードしましたが、滝の右から取り付いて下から2分の1くらいのところで右手を横に引きながら水流の中にホールドをとりに行くところが核心。さらに落ち口近くも意外に悪く、この滝に限っては落ち口から離れて右へ逃げても可との話でした。黒澤さんが上で確保の態勢をとってから、まずM氏が登り、次に私の番が来ました。水流の中に果敢に手がかりを求めに行くところは思いのほかにホールドが遠く、上から水圧を受けて物理的にも心理的にもプレッシャーがかかります。ここを切り抜けて最後が行き詰まりかけましたが、何とか上に辿り着き右岸のしっかりした確保支点にビレイすることができました。懸垂下降で滝の下に降りると、後続パーティーがいないことを見てとった黒澤さんが「リードやってみますか?」と誘いをかけてきました。
寒さと緊張で武者震いしながら、先程トップロープで登った滝の右手の壁に今度は上からの確保なしで取り付きます。幸い今日のF5には名物の(?)「花を生けた牛乳瓶」もなく、勇気を振り絞ってどんどん登るだけです。ランニングの支点は古いピトンで、ここに細いスリングを通してクイックドローをかけますが、ロープをクリップするまでの間にも飛沫がかかってきて寒さのために筋肉が消耗してくるので、とにかく手早く登らなければなりません。1本目をクリップしたら左足を外傾したフットホールドに乗せて左へ回り込みつつ身体を上げ、一段上のフットホールドに右足を上げて左足を水流の中に止め左手一杯伸ばしたガバホールドを取ってさらに一段上がる……とここまではうまくいったのですが、この次の1手がわかりません。先程トップロープで登ったのだからわからないはずはないのですが、本当にわからず困りました。やがて、先程はさらにシャワークライムを続けて水流の中を行ったことを思い出しましたが、右上を見るとちょっと高いところに格好のフットホールドが見えました。その先のホールドに右手をかけ、右足を上げてじんわり立ちこんで行くと、眼の前に残置ピトンがあってどうやらこのムーヴが正解だった模様(このあたり記憶があいまいなので参考にはしないで下さい)。あとは傾斜が立ってはいるがホールドには困らないIV+くらいのフェースクライミングとなって、最後を右に逃げて先程の確保支点へ無事に逃げ込みました。流動分散を作って確保態勢を整え、ギアを回収しながら登ってきた黒澤さんを迎えましたが、確保支点までやってきた黒澤さんが開口一番「juqchoさん、リードのときはいいムーヴをしますねぇ」。
懸垂で下り、F4からF1までは左岸を巻きました。最後に3m滝をクライムダウンして終了。久々の沢登りで水に親しみ、滝のリードも成功して充実感に包まれました。

