Mr. Big

2009/06/21

プログラム再結成の経緯はよくわからないままに、Mr. Bigのオリジナルメンバーによる日本ツアーの最終日を横浜アリーナで。

実はMr. Bigはリアルタイムでは聴いていなくて、気がついたときはPaul Gilbertが脱退した後。代わりにRichie Cotzenが参加してからのMr. Bigは2000年2002年に観ていて、それぞれに充実したライブではありましたが、かたやPaul Gilbertのプレイを直に聴いたのはSimon Phillipsのソロツアーへの飛び入り参加だけ。このときはJeff Beckの「El Becko」を演奏して、冒頭の派手なピアノのフレーズをギターで弾いてみせたことに驚嘆したのを覚えています。というわけで、この日の楽しみは「Mr. BigのPaul Gilbert」のプレイを観ることにありました。もちろん、YouTubeで予習もばっちり(?)。

この日の私の席はセンターの43列36番で、これがどういう席なのか当日までわかっていなかったのですが、武道館でいえばアリーナ席にあたるところで、開演前の座席からの眺めはこんな感じです。うーん、これは間違いなく2時間立ちっぱなしだな、と覚悟を決めはしたのですが、これは甘い見通しでした。

座席からの眺め

定刻の17時を5分過ぎたところで非常灯が消灯されると、それだけで客席は大喜び。さらに開演間近を告げるアナウンス、湧き起こる手拍子、そしていよいよ暗転。1曲目は、これ以上のつかみはないだろうと思われる派手な曲「Daddy, Brother, Lover, Little Boy」。私のカラオケの定番曲でもあります。そして定位置の上手に立つPaulは昔見たとおりののっぽで、例によって(?)ヘッドホンをしての演奏です。それにしてもさすがビッグネームのMr. Big、音も素晴らしいし、照明も明るくカラフル。そして曲の途中ではマキタのドリルもちゃんと出てきて、BillyとPaulが高速フレーズをこれで演奏していました。続く曲は、イントロの特徴的なドラムパターンが大好きな「Take Cover」。昔、音楽仲間のMickyさんが御茶の水でのDJイベントでこの曲をかけたときに震えがくるくらい感動して以来のフェイバリットソング。ここでもエンディング近くのオクターヴァーをかけたようなきらきらとしたギターの音がきれいです。さらに畳み掛けるようにイントロのタッピングパターンが面白い「Green-Tinted Sixties Mind」。この曲では彼ら4人の分厚いコーラスが聴けて、Mr. Bigが高度な楽器演奏能力だけでなく、ヴォーカルバンドとしても一流であることを再認識させられます。

……といった具合にのっけから名曲三連発。その後、ステージの前方に花道を通して設けられた小さなサブステージでの挨拶を経て曲はさらに進みますが、お目当てのPaulのプレイはやはり凄い。そして、時折後方のスクリーンに大写しになる彼の手もやはりデカイ!また、Ericは相変わらずとても若々しく、突破力のあるヴォーカルは健在で、フロントマンとしてもコール&レスポンスで客席を上手に煽ってきますし、ドラムのPatも終始にこにこしながら抜けのよい音を叩きだしてきています。

Eric以外の3人がバーバーショップスタイルのコーラスを聴かせたあと、ギタートリオ構成になってホルストの「惑星」、そしてドラムソロ。Patはどかどかと叩きながらビートルズを歌うのが定番で、以前は「Let It Be」を歌っていたのを観ましたが、この日、甘い声で歌われたのは「The Long And Winding Road」。続く「Price You Gotta Pay」でBillyがハーモニカを吹く間、その後ろから二人羽織状態でEricがベースを弾く場面がありましたが、Mr. Big解散の原因がこの二人の不和にあったことを思えば、なかなか感動的な場面ではあります。

Paulの菊水ギター(謎)が派手なリフを奏でる「Stay Together」の後、しばらくステージ上が暗いままの時間が流れ「まさかトラブル?」と不安になる頃、サブステージ上にEricがアコースティックギターを持って登場しました。ララララ〜♩という場内一体の合唱から始まる「Wild World」を皮切りに、ここからはアコースティックセット。Billyはベースですが、後の3人はアコギを肩から下げてコーラスを歌います。ん?Patもギター?しかし、彼のギターはやはり、ただのパーカッションと化していました。そして派手なイントロをアコギで再現した「Take A Walk」の途中からPaulとPatが後ろに下がり、エレクトリックセットへ移行。そのままダブルネックでのギターソロとなり、さらにBillyもダブルネックのベースを抱えて登場すると二人の弦楽器奏者によるデュオとなって、4人がサブステージに揃ったところではPatはBillyの、EricはPaulの人間カポタストとなっていました。

またしても大合唱を誘発した「Rock & Roll Over」の次は、Billyのベースソロ。はっきり言ってコンプレッサーのかけ過ぎで芯がなくなったような彼のベースの音はどうしても好きになれない(たまにベースペダルの重低音が入るとほっとする)のですが、ベーシスト版「技のデパート」と呼べるほどの多彩で見栄えのするベースプレイはやはり健在でした。右手でコードを押さえて左手でフレージング、ダブルハンドタッピング、スウィープ、自在なハーモニクス。そして誰もが予想したとおり、ダブルハンドトリルからギターとベースの掛け合い、そして有名なユニゾンのタッピングプレイを経て「Addicted To That Rush」。コーラスのオーオー♩で思い切り盛り上がって、本編の終了となりました。

アンコールでステージ上にバンドが戻ると、後方のスクリーンにPatとEricの子供達から「Happy Father's Day」とのメッセージが大写しにされ、場内に暖かい笑いが広がります。そしてEricのMCは、この横浜は今回の日本ツアーのラストだが、Mr. Bigの終わりではない!というもの。今回の再結成は一過性のものではない、という意味なのでしょうか?MCはメンバー紹介に移って、大ヒット曲「To Be With You」。実はこの曲がどうしてここまで人気があるのか、その理由がさっぱりわかっていないのですが、そんな疑問におかまいなしに会場は大歓声。そして超高速ユニゾンでのイントロを持つ「Colorado Bulldog」でしっかり引き締めて(Ericは途中で上手の客席の女の子たちにキスしに行っていましたが)、再度メンバーは下手に下がりました。

……しかし、場内はまだ暗いまま。そろそろ膝が痛くなってきました。

二度目のアンコールは、非常に面白い曲で始まりました。Paulが予想外にうまいドラムをひとしきり叩いた後、上手のEricがギターで弾き出したのは、あの「Smoke On The Water」。Patも下手でベースを弾いていて、Billyはと言えばリラックスして缶ビールを飲んでいたかと思ったら、メインリフが終わったところから渾身のヴォーカルを聴かせてくれました。さらに途中でEricがベース、Billyがギターにスイッチして、Billyがこれまた本職なみのギターソロを聴かせ、Patが後半のヴォーカルをとりました。この曲はもともと演奏者を選ばない名曲ですが、それにしてもこの組み合わせで聴けるとはなんてゴージャス!

特徴的なコーラスパートを持つ「30 Days In The Hole」を経て、これは珍曲「I Love You Japan」。背後のスクリーンは日の丸の上にMr. Bigのロゴ、楽器はYAMAHAベース、TAMAドラム、Ibanezギター。そして歌詞は

Domo arigato, chotto matte kudasai
There's sushi on my table
And wasabi in my eye

と抱腹絶倒ながらジャパン一色。

演奏が終了して、一度はPatが前に出てきて4人が一列に並び、これで終わりかと思われたのですが、もっとやれ!という客席の期待の拍手とのにらみ合い(?)の後に、Patがドラムセットに戻って最後の曲は、Talasの「Shy Boy」。というわけで最初のヴォーカルはBillyでしたし、当然Billyの超絶ベースも入ってくるのですが、ここまでくるとBillyが何をやってもフツーに演奏しているように見えてしまうから不思議です。

この曲でついに演奏終了。サブステージに全員が出てきて、客席からのリスペクトと愛情のこもった拍手に応え、ステージ側からの記念撮影におどけてみせて、満面の笑顔で肩を組みながらバックステージに消えていきました。そして場内が明るくなったのは、19時50分。この間立ちっぱなしですっかり膝ががくがくになってしまいましたが、演奏も音も照明も申し分なし、十分過ぎるくらいに客席の期待に応えてくれた、本当のプロフェッショナルによる貫禄のショウでした。お目当てのPaulも、曲によってチューニングが気になる場面はありましたが、あのデカイ手をフルに活かした自由自在なギタープレイはもとより、ヴォーカルもドラムも一流で、完成されたミュージシャンだと感じました。

さて、Ericが語ったように今後Mr. Bigはこのメンバーで活動を続けるのか?それは彼らのミュージシャンとしてのキャリアにとって(経済的な理由以外で)有意義であり得るのか?といったあたりが最後に気になるところですが、彼らがいずれ本当にその答(新譜)を持って来日してくれるのであれば、こちらも再びライブに足を運ぶことになるでしょう。

ミュージシャン

Eric Martin Vocals / Guitar
Paul Gilbert Guitar / Vocals
Billy Sheehan Bass / Vocals
Pat Torpey Drums / Vocals

セットリスト

  1. Daddy, Brother, Lover, Little Boy
  2. Take Cover
  3. Green-Tinted Sixties Mind
  4. Alive And Kickin'
  5. Next Time Around
  6. Hold Your Head Up
  7. Just Take My Heart
  8. Temperamental
  9. It's For You (Three Dog Night)〜惑星
  10. Pat Solo
  11. Price You Gotta Pay
  12. Stay Together
  13. Wild World (Cat Stevens)
  14. Goin' Where The Wind Blows
  15. Take A Walk
  16. Paul Solo
  17. Paul / Billy Duo
  18. The Whole World's Gonna Know
  19. Promise Her The Moon
  20. Rock & Roll Over
  21. Billy Solo
  22. Addicted To That Rush
    -
  23. To Be With You
  24. Colorado Bulldog
    -
  25. Smoke On The Water (Deep Purple)
  26. 30 Days In The Hole (Humble Pie)
  27. I Love You Japan
  28. Baba O'Riley (The Who)
  29. Shy Boy (Talas)