渋谷のOn Air Eastで、John Wettonのライブ。最新アルバム『Welcome To Heaven』のプロモーションとしての来日ですが、King Crimson時代の天才的なベーシストの面影はもはや期待できなくても、ここまでくるとこちらも意地というか腐れ縁です。
オールスタンディングのOn Air Eastに入ったのは開演時刻の約1時間前=18時頃。ステージが十分高い位置にあるので前に詰めずに後ろに陣取ることにしたのですが、目の前に背の高い人が立つといっぺんに見えなくなるのでこの選択は失敗だったかも。小学校の朝礼と同じように背丈の順に前から並べるというわけにはいかないものか?などと考えてしまいました。開演時刻の15分前、スモークがたちこめはじめる頃にはスーツ姿も含めて意外に混み合ってきて、定刻を10分程過ぎたところでメンバーが登場しました。向かって左端はローランドのシンセを2台重ねたJohn Beck(元It Bites)。彼は1994年の大阪でのJohn Wettonのライブでくねくねと身をくねらせながらキーボードを弾く姿を見て以来だからずいぶん久しぶりです。隣はギタリストのJohn Mitchell、後ろがドラムのSteve Christeyで、その前にビヤ樽のようなJohn Wetton。右端はコルグのシンセを置いた元King CrimsonのIan McDonaldで、こちらは1996年のSteve Hackettのツアーで観て以来です。オープニングは新譜1曲目の「Heart Of Darkness」。John Wettonは真っ赤なシャツに茶色のジャケットを着て真っ赤なベースを腹に乗せています。「コンバンワ!」のMCに続いていきなりKing Crimsonの「Red」を投入してきたのには心底驚きました。メインリフはギターとIanのサックスがユニゾンで、中間部のベースがもう少し太くディストーションがかかっていればと思いましたが、ドラムがBill Brufordの破壊的な雰囲気をかなりいい線まで再現していてよい演奏でした。今度はJohn Beckが立ち上がって聞き慣れたキーボードの7拍子リフ。U.K.の「In The Dead Of Night」です。John Mitchellのギターソロは、原曲のAllan Holdsworthの流麗なものとは異なりはっきりとロック風でした。ぐいぐい来るなー、と思っていたら「From Asia」とアナウンスがあって「Sole Surviver」。コーラスから入って終わりの方にIanのサックスソロを入れていましたが、なぜかドラムが走ります。
以下、John Wettonのソロ作品やKing Crimson、U.K.、Asiaの各時代の作品が演奏されて、特にKing Crimsonに力点を置いた選曲だったようです。そのKing Crimsonの結成時のメンバーでもあったIanは何となく所在なさげにステージの端に立っていることが多かったのですが、さすがに「宮殿」でのフルートソロはぐっと聴かせました。また、John Wettonのライブに欠かせないアコースティック・タイムは、下記のセットリストの「Book Of Saturday」から「30 Years」までとアンコールの「The Night Watch」。John Wettonは前回の来日時と同様よく太っていましたが、あのときはヒゲをはやしていたのでまだよかったものの、今回はヒゲを剃っているので顎のまわりがたぷたぷしているのが見えて、往年のハンサムぶりを知っているファンとしては哀しいものがあります。また声の調子ももうひとつで、しわがれたり声量が出ていない場面が散見されました。それでもライブが成立するのは、King CrimsonにしろAsiaにしろとにかく楽曲が優れているからなのでしょう。
本編の最後は真っ赤なライトに照らされて演奏された、King Crimsonの名曲「Starless」。前半の徐々に盛り上がる部分や壮大なエンディングはすばらしかったのですが、ドラムとベースがハイスピードの7拍子リフに突入するところは本来ドラマーの腕の見せ所で、ここをSteve Christeyがツインペダルでドカドカとやってしまったのはかえってダイナミズムを損ねたように感じました。アンコールの1曲目は意外な「The Night Watch」。King Crimsonの曲の中でも最も好きな曲のひとつで、ここではアコギ・キーボード・フルートのトリオで演奏されましたが、このアレンジもなかなか。そして最後はお待ちかねの「Heat Of The Moment」で、最初からロックバージョン、しかも相当にテンポが速い。聴衆にもコーラスを(レゲエ調になったりしながら)しっかり歌わせて大団円となりました。
今回は「Don't Cry」が演奏されず、また「キミタチサイコダヨ」のMCもなかったのですが、それでも2時間たっぷり聴けて満足のライブでした。