日本橋高島屋で4年ぶりに「高山辰雄展」を観ました。前回は1981年から1995年までの完成された画風の作品を集めたものであったのに対し、今回はより幅広く戦前の東京美術学校時代から今日までの作品を並べて、画家の画業70年を振り返るという企画です。
高山辰雄の絵を主題で分けると、初期のまだ画風が確立していない時期を除き、いずれも画家ならではの特徴をそなえた5つの系譜があります。牡丹をはじめとする静謐な花鳥画、山間の大きな風景の中に人間の営みの小ささと確かさを描く心象的風景画、不思議な眼差しで見るものの心の奥底を覗き込む女性像、モノトーンで描かれる《聖家族》シリーズ、そして釈迦や空海を大胆なフォルムで描く宗教画です。この展覧会にはそれらのすべてが網羅されて展示されていますが、最も心ひかれるのは3番目の不思議な女性像の作品群です。
……というより、実をいうと、見るものを不安にさせるフォルムの歪み、視点のずれや暗い色調を特徴とする高山辰雄の絵は、自分の好みからはかなり遠いところにあります。しかし、かつて《二人》(1981年)に描かれた女性の不可思議な眼差しに心を奪われて以来、好きではないけれど見過ごせない画家として記憶にとどめられてきていたのでした。



