新春大歌舞伎は新橋演舞場で、初春吉例の曽我物の代表「寿曽我対面」、十一代目團十郎の三十五年祭と銘打って現團十郎丈が家の芸を披露する「勧進帳」、菊之助丈の弁天小僧が期待の「弁天娘女男白浪」の昼の部3本を観ました。とれた席は二階席の右側前から3番目。正面に花道が端から端まで見える、勧進帳にうってつけのポジションです。
寿曽我対面
辰之助丈の曽我五郎、菊之助丈の曽我十郎に新之助丈の朝比奈がからみ、富十郎丈の工藤が締める構成ですが、辰之助丈の曽我五郎はちょっと単調で、客席もいまひとつ感情移入できない感じ。
勧進帳
團十郎丈の弁慶、八十助丈の義経、菊五郎丈の冨樫と豪華な布陣。山伏問答の緊迫感、そして富樫が弁慶と向き合った後、後ろを向いてついと顔を上げ、下がる際の覚悟には感動を覚えます。以前幸四郎丈の弁慶に團十郎丈の冨樫という配役で勧進帳を見たことがありますが、こちらもまたすばらしく、團十郎丈はむしろ冨樫役者ではないかと評されていたのでこのあたりを見極めたかったのですが、「……どちらもいい」が結論です。また今回は、最後の飛び六法がきちんと見られたのもポイントでした。
弁天娘女男白浪
さて、自分のお目当ては最後の「弁天娘女男白浪」、いわゆる「白浪五人男」です。白浪とは中国の故事に由来し盗賊のこと。つまり「5人の盗賊たち」ということになりますが、とりわけ有名な場面はふたつ。ひとつは武家娘に化けた弁天小僧が南郷力丸とともに呉服屋・浜松屋を騙して金をせしめようとするものの邪魔が入って正体を見抜かれ、開き直って正体をあらわし「知らざぁ言って聞かせやしょう」と名乗る場面。もうひとつは捕方に追われた5人が桜が満開の稲瀬川の土手に並んで、「問われて名乗るもおこがましいが」の日本駄右衛門以下次々に名乗りをあげるツラネ。加えて今回は、大屋根上で弁天小僧が立ち回りを見せた後に立腹を切ると、大屋根全体が後ろにのけぞり下から山門がせり上がる「がんどう返し」による舞台転換も見逃せません。
で、菊之助丈の弁天小僧は文句なしの魅力。娘姿のときは楚々として美しく(オペラグラスを覗いていた隣席の女性客が思わず「きれい……」と呟いたほど)、男であることを見破られると一転して伝法な男言葉にかわり、緩急のついたセリフ回しのユーモラスさと切れ味のいい啖呵の爽快さ、それにそうした中にも色気が感じられて引き込まれます。その後もツラネの様式美、大屋根での捕方のアクロバティックなトンボの連続とがんどう返しの大道具のスペクタクル、とストーリーの説明には無頓着にこれでもかと見せ場を繰り出してくる楽しい芝居でした。