2000年最初のライブは、Zepp Tokyoで、Mr. Bigのライブ。Paul Gilbert脱退後、新しいギタリストRichie Kotzenを迎えて制作された『Get Over It』をひっさげてのツアーです。
Zepp Tokyoはスタンディングなのでいい位置を占めようと開場時刻に到着。すぐに順番が来て入場すると、ほぼど真ん中の前から15m位のところに陣取ることができました。プログラムを読みながら待つこと1時間、定刻を5分強回ったところで照明が落ち、効果音が鳴り響いて歓声が上がります。幕がさっと落とされて始まったのは、新譜のオープニングナンバーでもあるノリのよい「Electrified」。ステージ上には、向かって左にベースのBilly Sheehan、中央がヴォーカルのEric Martin、右がギターのRichie Kotzen、中央奥はドラムスのPat Torpey。Billyは例によってYamahaの特注ベース、RichieはTelecasterでCDで聴いていたのとは大違いの(CDでは少々線が細いなと感じていたのですが)太く艶やかな音を出していましたが、それより何よりPatのドラム!構成は以前のツーバス / 2タム / 2フロアタムからワンバス(ツインペダル)/1タム / 2フロアタムへとシンプルになっていますが、スネアから何からすべてがよく鳴っており、ぐいぐい曲を引っ張っていきます。曲は続いてPatのドラム・フレーズに導かれて「Take Cover」、そしてRichieのギターにBillyのコード弾きが重なるイントロで「Green-Tinted Sixties Mind」。このイントロはPaulのときはタッピングで流れるように演奏されていたのですが、Richieはこれをタッピングを使わずに再現していたのが特徴的。この他の曲も含めて、普通ならタッピングを使うようなフレーズでも彼は正確な左手のフィンガリングと右手のピッキングでこなします。またRichieのヴォーカルは新譜からの「Static」で存分に披露され、客席は大歓声。Ericも気持ちよいくらいに声がよく出ており、狭いステージ上を右に左に走り回り、ときにタコ踊り(?)のようにくねくね身体を動かしながら他のメンバーや観客を煽っています。しかし、煽られるまでもなく今日の観客はノリがいい。スタンディングのせいもありますが、それ以上に筋金入りのMr. Bigファンが集まっているのか、ヒット曲はもとより、新譜からの曲でもコーラス部分をしっかり大合唱しています。それも、サビのワンフレーズだけ、といったものではなく、例えば新譜の「Superfantastic」の長いコーラスや、さらに大ヒットした「To Be With You」では1曲まるごと、といった具合。こちらも知っている限り一緒に歌いましたがとても太刀打ちできない……。
このバンドの魅力は、こうしたロック・バンドとしてのノリとエンターテインメントの部分もさることながら、個々の楽器奏者がそれぞれ高い技術をもっているところにあります。もちろんそうしたテクニカルな面を強く押し出した曲も少なくない(「Addicted To That rush」など)のですが、やはりそれぞれのソロコーナーが種目別個人競技、といった感じでした。最初はRichieのギターソロ。リズム隊を後ろにつけない純粋のソロで、特に左手の技術を見せつけていたのが印象的。ついでPatのドラムソロは、ハイハット中心の金物系からスネア / タムに移り、ついで存分に足技を見せる構成で、バスドラを連打しながらシンバルを鐘のように鳴らしたり着ていたTシャツを脱いだりするところはEL&PのCarl Palmerのパロディーかも?極め付けは、四肢をフル活用して高速連打 / タム回しを続けながらThe Beatlesの「Let It Be」をゆったりと歌うところ。このバンドは4人とも歌えるところがもうひとつのポイントですが、ドラムソロの中に自分のヴォーカルをフィーチュアしたドラマーは初めて見ました。そしてソロのトリはやはりBilly。彼の技術については教則ビデオでも見ているしNiacinのライブでも堪能していますが、今回はまたいかにもロック・ベーシストらしいソロでした。彼のテクニック面での特徴は、あらゆる音程で自在にハーモニクスを操れること、コードプレイの多用、そして両手タッピングであり、それらのすべてが盛り込まれたソロが5分以上にわたって繰り広げられて会場は呆然。
アンコールは3回。2時間のステージがあっという間で、まだまだ聴き足りないという感じでしたが、照明がついて出口に向かって歩き出してみると膝ががくがく。1時間の待ち時間に加えて2時間タテノリで身体を動かしていたのだから無理もありません。ともあれ、ライブ映えする楽曲の良さ、圧倒的な演奏技術、ショーマンシップと客席のノリの良さに申し分なしのPAが結びついた、最高のライブでした。