シルヴィ・ギエムの「眠れる森の美女」を、横浜の神奈川県民ホールで観ました。開演15時、終演17時35分。東京バレエ団と東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団(指揮:ミッシェル・ケヴァル)。
当代きってのプリマ、シルヴィ・ギエムの公演を前回見たのは2年前だから随分久しぶりですが、カリスマ的な人気の高さは相変わらずで、会場にはギエム目当ての幅広い年齢層の観客が詰め掛けました。東横線で渋谷から桜木町に出てタクシーに乗ると、最近の不祥事に目をつけた右翼の街宣車が県警本部の前で大きな声を出している横をすり抜けて神奈川県民ホールへ。今回はこれまた久しぶりにバレエ鑑賞の「師匠」と御一緒させていただくことになっているのに、開演時間になっても師匠が現れずやきもき。第2幕から合流した師匠に聞いたところでは、先に山下公園を散策するつもりで早めに出たのに中央線がトラブルで止まってしまい間に合わなかったとのこと。しかし、遅れたとはいえ第1幕もちゃんとロビーのモニターで見ることができたし、そもそもギエムの出番は第2幕から(普通は第1幕にあたる部分は「プロローグ」と呼ばれ、オーロラ姫の成人の祝いが「第1幕」とされます)なので実害は少ないのでした。
さて、「眠れる森の美女」のオーロラ姫はクラシック・バレエの中でも最も高度なテクニックが要求される役どころであり、その最初の見せ場は第2幕のローズ・アダージョです。4人の貴公子に求婚されるオーロラ姫は、貴公子たちに次々に手をとらせながらポアントで立ち、アチチュードの姿勢を続けたまま男性の動きに沿ってゆっくり回転します(アチチュード・アン・プロムナード)。観客はかたずを飲んで見守りますがギエムはまったく動じるところがなく、まるで神様の見えない手が彼女を支えているかのような安定感でこの場面をこなして最後のアラベスクを決め、観客の割れんばかりの拍手を浴びていました。ここまで、第1幕でのカラボスとその従者たちやリラの精がけっこうがんばっていて「東京バレエ団もやるじゃないか」と思っていましたが、やはり役者が違い過ぎ。師匠も賛嘆して曰く「トウ・シューズの音からして違う」のだそう。そして圧巻は第3幕の王子とのグラン・パ・ド・ドゥ。大胆なフィッシュもすごいですが、最後のポアントでの静止時間の長さは驚異的で、オーロラ姫が完全に自立した女性へと成長したことをこれ以上ないくらいはっきりと示していました。
やはり、ギエムはすごい。