2007年02月
特集
今、書店に置かれている雑誌「pen」(No.193)の特集記事「ロックのデザイン」が、たいへん面白い。
ロックアルバムのジャケットをデザインする7人のクリエイターをとりあげて、それぞれのインタビューとアートワーク解説を冒頭に置き、ジャケットの時代性を解説し、ライブ写真やファッションにも目配りした上で、各界の50人のフェイバリット・ジャケットを紹介するという内容。力のこもった好企画で、ロックファンならずとも音楽好きなら必読です。DJの皆さんには、第二特集「アナログ・プレーヤーで聴く」もツボかも。
ちなみに自分にとってのフェイバリット・ジャケットを考えてみましたが、これが1枚だけ挙げるとなるとなかなか困難です。ショッキングという意味では、The Clashの『London Calling』のベースをステージに叩き付ける写真なんてあまりにもかっこいいですが、あいにくと自分はパンクが嫌い。Roger Deanの一連の作品ではYesの『Relayer』が地味ながらいいと思うし、ヒプノシスならPink Floydの『Wish You Were Here』でしょうか。しかし、LP時代のジャケットの紙の手触りまで含めて考えると、King Crimsonの『Starless And Bible Black』が一番になるかも知れません。シンプルな表面、呪文のような裏面、そして何よりジャケット見開き内側に広がる万華鏡のような世界はCDでは再現できない美しさだと思います。

皆さんのフェイバリット・ジャケットは、何でしょうか?
恋文
今日は、叔母の葬儀で愛媛県の松山に日帰り往復。咽頭ガンで手術をし、一度は完治したと思われたものの、再発して入院という、まるでリリー・フランキーの『東京タワー』を地で行くような経過の末に、一昨日ついに亡くなったものです。最後の入院生活は数ヶ月に及び、この間家族(叔母の息子=私のいとこ)もずいぶん苦労したようですが、『東京タワー』と違って痛みに苛まれるということがなかったのが幸いでしたし、最後まで看取りきったという満足感がいとこにはありました。
今朝一番のANAで松山空港に降り立ち、そこからタクシーで斎場に直行するとちょうど棺に納める直前で、床に横たわる叔母に最後の挨拶をすることができました。そして皆で棺に移して故人の思い出の品を入れていったのですが、とりわけ目を引いたのが古びて茶色に変色している何十通もの封書の束。すべて、先に亡くなっていた叔父が結婚前に叔母に送っていた手紙、つまりはラブレター。これを見て孫娘たちは泣き出してしまいましたが、叔母は半世紀もの間、それらの恋文を大切な思い出として手元にとっておいたのです。
そんな風に大事にとっておけるような手紙を、自分はあいにく持っていません。電子メールのやりとりでは、棺の中に持ち込むこともできないし、自分と一緒に灰にすることもできません。そのことにもまた、悲しい思いをしました。
井戸
ושאבתם מים בששון ממעייני הישועה
U’sh’avetem mayim be-sasson Mi-ma’ayaneh ha-yeshua
あなたがたは喜びをもって、救いの井戸から水をくむ。(イザヤ書第12章第3節)
小学生の頃、たまに校庭で全校生徒がフォークダンスを踊る時間があって、そこで皆でよく踊ったのが「マイム・マイム」。意味を考えることもなく、その軽快なリズムと明るくもちょっと哀愁のある旋律、そして「マイム・マイム」と歌うリフレインの楽しさに喜んで踊っていたものです。実は、「mayim (מים)」はヘブライ語で水、「be-sasson (בששון)」は喜びの中に、そしてマイム・マイムは全体として井戸を掘り当てた喜びを表現したイスラエル民謡だということを、イスラエルの農場で何ヶ月かアルバイトしたことがあるラン仲間マドカに最近教えてもらいました。
その話にいたく感動した私を見て、それではイスラエル料理を体験させようということでマドカが連れて行ってくれたのが、江古田の「シャマイム」。

日本唯一のイスラエル料理レストランだそうです。

トマトとひよこ豆のスープ。スパイシーでたいへんおいしい。

いかにも中近東風。真ん中のフムス(ひよこ豆のペースト)を右のピタパンの内側に塗り、残りの具材を適当にぶちこみます。右下の茶色いのはファラフェル(ひよこ豆とハーブの揚げ物)。

こんな感じ。美意識は求められないのだな、と言ったらマドカに怒られました。ちなみにマドカはイスラエルにいるときに「ラクダ2頭やるから嫁にならんか?」というナンパの仕方をされたことがあるそうです。これが相場に照らして妥当な値付けかどうかわからないので断ったそうですが、果たして実際のところは?

シシカバブとシシリック(チキンのグリル)。

デザートはマラビ(ミルクプリン)。

コーヒーには六芒星のクッキーが。
どれもおいしかったのですが、自分としては最初にいただいたスープが一押し。今回いただいた「おまかせ食べ放題コース」はご覧の通りのたいへんな量で、しかもおかわり自由でコース料金2,100円と非常にリーズナブル。飲む方はイスラエルのマカビービールとヤルデンワイン(赤)をいただき、すっかりお腹一杯になりました。店員さんも明るく親切で、この店はお勧めできます。
起用
思うところあって、Downes-Payne体制のAsiaが2001年にリリースした『Aura』を聴いてみました。
冒頭の「Awake」。オマル・ハイヤームの「ルバイヤート」に題材をとり、The journey will be over, Awake!
と歌い上げるこの曲は本当に素晴らしい!ゆったりしたリズムに乗った輝かしいシンセアルペジオの後ろで空間系の全音符が作るコードの流れが優しく、このイントロだけで十分に惹き付けられます。『Aqua』を聴いたときにも感じたことがですが、Geoff DownesのKorgシンセサイザーを使った音づくりの美しさはJohn Wetton時代とは明らかに一線を画しています。そしてJohn Payneのヴォーカルが入ってくるとシンセの白玉と控え目だが効果的なリズムギターが絶妙に絡み、中間部の穏やかなシンセソロでは最初の上行する3音にピアノをもってきて場面転換を印象づける巧みなアレンジも見せて、Downesの音楽センスを存分に認識させてくれます。
このアルバムは参加ミュージシャンも素晴らしく、DownesとPayne以外のパートは曲ごとに異なっており、たとえばギタリストではSteve Howe 、Elliot Randall、Pat Thrall、Ian Crichton (Saga!)、Guthrie Govan。ベースでは1曲だけですがあのTony Levin。ドラムもSimon Phillips やVinnie Colaiuta、Michael Sturgis、パーカッションにLuis Jardimといったラインナップ。こうしたメンバーが惜しげもなく投入されて、実に見事な大人のロックを展開しています。
……ん?「大人のロック」ということは、AOR?もしかして『Aura』ではなくて『AORa』だったか?
いや実際のところ、冒頭の「Awake」こそ興奮したのですが、以下全編を通じてたいへん落ち着いた演奏が展開し、John Payneの思い入れたっぷりの歌い方もまさにAORシンガーのそれ。凄腕のミュージシャンがインタープレイで火花を散らすスリリングな展開、といったものとは無縁の世界。もちろんそれぞれのゲストは持ち場でさすがのプレイをしており、たとえば3曲目「The Last Time」でのVinnie Colaiutaのドラミングは一聴の価値があるし、Steve HoweとIan Crichtonとがそれぞれの個性を発揮しているのも聞き逃せません。しかし「Ready To Go Home」などを聴くと、たしかに朗々とした素晴らしいバラードだとは思うものの、そこにTony Levinを起用する必然性が感じられません。もっとも、それは曲に対してプラスに作用できなかったTonyの側の問題なのかも知れませんが。同じバラードなら7曲目「On The Coldest Day In Hell」の胸を締め付けられるようなアレンジの方がよく(ベースはPayne自身と思われます)、歌詞もJohn Wettonのソロに出てきそうな内容ですが、Payneのヴォーカルの方がはるかに味わい深いものがあります。ロックテイストという点ではSimon Phillipsの激しいドラミングの上でSteve Howe 、Pat Thrall、Ian Crichtonの3人のギタリストが競演する「Free」が聴きどころになるはずですが、残念ながら8分を超える曲の長さのわりに持ち込まれているアイデアが少なく、単調な印象。これがYesだったら、たった3つのモチーフで20分くらいの曲に仕立てることだって雑作もなかったでしょうに。
などなどシビアなことも書いてきましたが、Asiaというバンド名が引きずる大艦巨砲主義的呪縛を離れて素直に向き合って聴けば、全体としてはとても安心感のあるアルバムだと思います。それにしても、これだけのミュージシャンを集め、ジャケットのイラストにはRoger Deanを起用しているのですから、相当な制作費がかかっているはず。このアルバムのセールスはどうだったのだろうか?と今さらながら心配にもなってしまいました。


ジャケットと言えば、本来のデザインは左の写真のもののようなのですが、Amazonから送られてきたCDのそれは右の暗〜いブルー。この色遣いでは絶対買う気になれないので色違いのバリエーションというより印刷工程でのミスプリンティングだと思いますが、マーケットプレイスではなく普通に買ったつもりなのにこういうのが送られてきたのが不思議。Amazonよ、なぜだ?
発狂
今週はちょっと忙しかった。
金曜日納期でシビアかつボリュームのある文書作成業務があった上に、その金曜日には私が講師をつとめる100人程度のセミナーがあったので事実上納期が1日繰り上がっていたため、けっこうスリリングな日々でした。かろうじて金曜日午前中に成果物を送り込んで、夕方のセミナーの方もなんとか無難にこなしてほっと一息。
というわけで今日は開放的な気分で練馬高野台の松本クリニックへリハビリに行ったのですが、今日のリハビリは痛いのなんの。背中から腰にかけてのポイント(悪いところ)をぐりぐりやられて「うぅ……」と我慢。「痛いですよね?」「い、痛いです」「私なら発狂してますよ」自分が発狂するようなリハビリをお客にするなー!

苦悶のリハビリを終えて、近くに住んでいるクライミング仲間Y女史と待ち合わせ、前にも連れて行ってもらったイタリアン「Volare」へ。サラダ、トマト味のイカのリゾット、カボチャのプディングとコーヒーと楽しい会話のおかげで、なんとか回復しました。
渋谷に戻ってRECOfan。Pete Sinfieldの『Still』やらAtomic Roosterのボックスセットやらにいちいち反応しながら、実は目当てはジャコパスだったりしますが、結局ゲットしたのはFruuppの『Modern Masquerades』。今これを書きながら聴いているところですが、スナッピーの効いたゲートをかませないスネアやちょっともこもこした硬質のベースでの多彩なリズムアレンジなど、なんとも懐かしいプログレ初期の音づくり。ヘンなたとえですが、新●月も連想してしまいました。プロデュースは、あのIan McDonald。カラフルなキーボードはけっこう琴線に触れますが、ギターが線が細い上にタイム感が悪いかも。
