2003年04月

世代

4月24日、いつもよりずいぶん早く会社を出て帰路の電車の中、朝刊の読み残しを拾い読みしていたところ、国際面にタイの前外相へのインタビューが載っていたのですが、これがなかなか面白く、ひきつけられました。仏教国には珍しくイスラム教徒の前外相(国連事務総長の候補にもあげられた人物だとか)にイラク戦争の影響を聞くという内容だったのですが、イスラム諸国に対してなかなか辛口のコメントで、かつてイスラムが科学を温存・発展させてヨーロッパに伝えたように、イスラムも西欧流の自由と教育をとりいれ、貧困を脱しなければならない、つまりイスラム・ルネッサンスが必要だと力説していました。そして印象的だったのは、イスラム社会が変わるのにどれくらいの時間が必要か、とのインタビュアーの質問に「数世代」と答えていたこと。

ふりかえってみると、明治維新の為政者たちは日本が西欧式の立憲君主制度を確立して不平等条約の軛から脱するのに数世代を要すると考えていたかも知れないし、第二次大戦後の指導者たちも独立と経済的自立を回復するのにあるいは数世代を要すると考えながらかじ取りをしていただろうと思われます。しかし、今の我々には「世代」という単位で物事を考える発想は希薄だと思われ、むしろ「今さえよければ」的なふるまいが社会のあちこちに目につくくらいです。子をもうけていない私が世代を云々するのもおかしな話ではありますが、それにしてもタイの前外相の言葉は、はからずも今の日本に充満している近視眼的思考に対する痛烈な批判とも読めるようで考え込まされました。

[2003/04/24]

愛聴

The Spice Of Life In Concert温故知新。

……というわけではありませんが、最近、出勤前のBGMに15年も前に買った渡辺香津美の『The Spice Of Life In Concert』(LD!)をかけています。渡辺香津美というとYMOの最初のワールドツアーに同行したギタリスト、という認識しかなかった私が1987年のライブを収録したこの作品を買ったのは、ドラムがBill Bruford、ベースがJeff Berlinという強力なコンビだったから。もちろん主役の渡辺香津美のギタープレイは物凄く、ポール・リード・スミスの超美麗なブルーのギターとシンセサイザーにつないだスタインバーガーの2本で、クリーントーンからハードディストーションまで曲中でも実にカラフルに音色を変えつつ、どちらかというとロック寄りの弾きまくりフレーズを全身を使って弾いてくれるのがうれしい限りですが、お目当ての二人も期待どおりで、シモンズのパッドを10枚ほども並べてエレクトロニックなドラムを叩くBillの神様のような手さばきと、自身の教則ビデオでも使っていた愛用のベース1本で強力なフレーズを繰り出すJeffの神様のような指さばきを堪能することができます。Jeffは「HIPER K」と「J.F.K.」の2曲でシンセサイザー(DX-7とPro One)も弾いており器用なところを見せていますが、やはり見どころ・聴きどころは多彩なベースプレイ。特に高速ソロは「CITY」と「HALF BLOOD」で、トリッキーなソロパフォーマンスは「BASS SOLO」(そのまんま……)で聴くことができるものの、むしろ随所に見せるセンスのよいダブル・ストップやコード・プレイ、それに「UNT」でさりげなく見せる倍音を重ねるようなデリケートで美しいタッピングが、彼のミュージシャンとしての孤高の能力を証明しています。

ライブならではのミスも正直に映像化されていて、ギターのトーンの切り替えが遅れたり、果敢なポリリズムで突っ込んだドラムがリズムに戻り損ねたりといった点もご愛嬌なのですが、そうしたミスがふっ飛ぶくらい、激しいギターソロの終わりに目で合図を送る渡辺香津美にBillがシモンズでレスポンスして3人がぴったりとフレーズを合わせていく瞬間の緊張感が素晴らしく、カメラワークもそんな3人の一瞬のやりとりを逃さずとらえていて、見ごたえ・聴きごたえある作品に仕上がっています。これは、いつかは来るであろう我が家のレーザーディスク再生機の寿命が尽きる日まで、私の愛聴盤であり続けるでしょう。

[2003/04/06]

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